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『ボタニカ問答帖』瀬尾英男, 京阪神エルマガジン社
¥1,400
※再入荷しました タイトルのとおり、植物と著者が問答する形で、個々の植物が長い進化の過程でものにしてきた特技や特性を解き明かしていくユニークな1冊。植物図鑑のような、エッセイのような、不思議な味わいのある内容となっています。 「毒を盛る女」「たかる男」などの曰くありげなタイトルもさることながら、いかにもそれらしい口調で自分の生き様を語り始める植物たちの姿はどこか人間臭く、親近感が湧いてきます。 紹介されるのは、オジギソウや朝顔など馴染み深い草花から、リトープスなどの多肉植物、ウツボカズラなどの食虫植物まで全38種。写真も美しく、これまであまり気に留めてこなかった植物も、改めてその魅力を感じられるはず。(土澤) ■詳細 『ボタニカ問答帳』(京阪神Lマガジン社) 159ページ 2011年5月 初版 ■古書 特に目立った傷みはなくきれいです。
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『苔とあるく』田中美穂,WAVE出版(古本)
¥1,200
岡山県・倉敷市にある有名な古書店「蟲文庫」を運営する田中美穂さんの初著作。「蟲文庫」は雑誌で紹介されているのを読んで、いずれ行きたいと思っていたお店。その店主の人が本を出したというので手にとってみた、という出会いでした。その後お店も訪ねましたが、倉敷の美観地区にありながら、立ち並ぶ他のお店とは雰囲気を異にする、味のある古本屋さんでした。 お気に入りの古書店の紹介も、いずれこのサイトでやってみたいですね。 さて、『苔とあるく』のご紹介。植物の本なので図鑑や育て方ももちろん紹介されていますが、それよりも――たぶんそれこそが苔の魅力だと思うのですが――観察・採集の仕方、標本の作り方などが本書のメイン。学術書というより実用書といった趣で、その楽しさが、「ほったらかしだと、ただのゴミ」、「コケも風に揺れる」など、標語のような言葉とともに語られています。著者はまるで友人か飼っている猫に接するように親しげに苔について語り、苔を見つめ、育てる。その身近な視線がこの本をとても魅力的にしています。 本書に出会うまで、肉眼では姿がわかりづらい苔は私にとって、他の植物に比べると鑑賞の対象になりづらい存在でした。でも、この本に導かれるまま10倍のルーペをゲットして観察してみると、それぞれに全く違った姿をし、色も違い、小さな林や森のようにも見えてきます。また、その小さな植物があらゆる地表を、壁面を覆っていると思うとなんだかけなげでもあります。 一番驚いたのは、苔について書かれた文学作品があるということ。そんなジャンルがあったのか!とびっくりしつつ、その文章の美しいことにも驚かされます。その一部を抜粋してご紹介します。(土澤あゆみ) ※ちなみに写真の苔は、家の庭に生えていたものです。種類は…不明。 ●苔について/永瀬清子 まだここには 水と土と霧しかなかった何億年の昔 見渡してもまだ泳ぐものも這う者も 見当たらなかったおどろの時 濠濠の水蒸気がすこし晴れたばかりのしののめ おまえは陽と湿り気の中からかすかに生まれたのです なぜと云って 地球がみどりの着物をとても着たがっていたから いまでも私たちの傍にどこでも見られる苔よ お前は電柱の根っこにもコンクリの塀にも いつのまにか青をそっと刷いているのね まして街路樹の下の小さな敷物 敷石のあいだの細いリボン わかるよ 地球の望み 地球のほしがるもの 冬になっても枯れもせず 年中お前はしずかに緑でいる 人間はいつもそれをせっせとはがして 道路やビルを造っているのに でも苔は無言でつつましく 自分のテリトリーを守ろうとする 極致の建築をお前はつくる 描けば一刷毛か、点描でしかないのに それでもお前大きな千年杉のモデルなのよ そして繊毛のようなその茎の中に 秘密の静冽な水路があって 雄の胞子はいそぎ泳ぎ昇って 雌の胞子に出会うのです 大ざっぱすぎる人間には そのかすかな歓びがすこしも聴こえないけれども
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『緑のアイデア』石原和幸(中古)
¥500
SOLD OUT
マンションに住んでいたときにはベランダで野菜をプランターで育てたり観葉植物を育てたり、一軒家に引っ越してからは庭に畑を作ってみたりと、これまでずっと植物を育てることに挑戦してきたように思います。ではなぜそうしたいのかと考えると、子供の頃育った、野山に囲まれた自然豊かな風景をもう一度取り戻したいとどこかで思っているから。春にはたんぽぽの黄色、すみれの紫、山桜の薄いピンクが、夏には露草の青、どくだみの白、ねむの木のピンクと白のグラデーションが…と、思い出の風景はカラフルな色彩で溢れています。 その書名に一目惚れした本書の著者、石原和幸さんも、幼少の頃育った田舎の風景を胸に抱きつつ、世界的に活躍されているランドスケープアーティスト。著名な方とは後で知ったので、本書で紹介されているチェルシーフラワーショーで受賞した作品などはそれほど心惹かれなかったのですが(…)、マンション暮らしでの緑の取り入れ方や、どのように管理すればよいか、どのように楽しめば良いかがわかりやすい文章で綴られた前半はとても楽しい。例えば、洗面所をジャングルのようにもじゃもじゃにしたり、台所に小さな野菜畑を作ったりといった具体的なアイディアも紹介されていて、しかも、どれも実際にやれそうなものばかり。 観葉植物というと、存在感のあるかっこ良いものは高価なものが多く、初心者にとっては枯らしてしまうかもと考えて手が出しづらいもの。その点、本書で紹介されているのは小型で比較的手に入れやすい植物が多いので、その点でもおすすめできます。「まずは1鉢を育てるところから始めましょう」と語りかけてくれる本書を参考に、自分の部屋(家)を「緑」にしてみませんか? ■詳細 『緑のアイデア』(WAVE出版) 174ページ 2010年12月 初版 ■古書 特に目立った傷みはなくきれいです。