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『メグレたてつく』(中古) ジョルジュ・シムノン,河出書房新社

¥600 税込

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タイトルが気になって手に取った1冊。メグレがたてつける相手はあの人くらいか…と。

物語は、メグレが、メグレ夫人とともに友人宅で楽しい時間を過ごした後に始まります。

深夜。眠っていたメグレに若い娘から電話がかってくる。地方からパリに出てきたが、友人とはぐれ、金もなくて困っているから助けてほしいという。メグレはその娘の元へ行き、ホテルを紹介してまた家に帰った。それで終わるはずだったが、翌朝、彼は警視総監から思いもよらない話を聞かされ、辞職を勧められる。メグレが昨晩会った若い女が、メグレに誘惑されて酒を飲まされ、ホテルに連れ込まれたと訴えているというのだ…。

前半、いつもは犯罪者やその関係者を追い詰めていく立場のメグレが逆に、犯罪者扱いされ尋問されるだけでなく、辞職まで迫られる、という展開がまずおもしろ…いや、ハラハラするのです。

そして、今の地位やキャリアをすべて失いかねない境地に立たされているにも関わらず、そうまでして自分を陥れようとするのは誰か?と、警察官としての好奇心を抑えきれなかったり、娘の供述文書の中で、自分がなかなか魅力的に描かれていることにまんざらでもなかったりと、なんだか無邪気なメグレがとても頼もしく、応援せずにはいられません。

その間にも、やはり普通の人のように、娘の供述をそのまま信じる上司に憤りと不信感、そしてそんな目で見られることに恥ずかしさを感じたりし、揺れ動くメグレの心情も見事に描かれてします。

また、リュカやジャンヴィエら部下たちはもちろん、メグレ夫人もメグレの事件を解決するために奔走(?)します。メグレ夫人ファンにとっては、彼女がおっとりとメグレのことを心配したり思いやったり、力になろうとする様子はたまらないでしょう。

事件はその後、意外な展開を見せ、悲惨な事件が明るみに出るのですが、神の啓示があったかのようにメグレがあっさり解決します(笑)。シムノンはただただ前半のメグレを書きたかったためにこの小説を書いたのでは、と思わせられるほど。このアンバランスさも本書の魅力かもしれません。

巻末には、「解題・メグレ警視の周辺 メグレの初捜査」「完熟人生ミステリーを書いたシムノン」が収められています。(土澤)


■詳細
 文庫『メグレたてつく』(河出書房新社)
 
208ページ 
2001年4月 初版


■古書
表紙カバーに擦れがありますが、他は特に目立った傷みはありません。

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