『メグレ間違う』(古本)ジョルジュ・シムノン,河出書房新社
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またまたシムノンのメグレシリーズのご紹介です。すっかりはまっています。
メグレ警視シリーズを読み始めたことから他の警察ものも読むようになったのですが、なぜこれほど警察ものに惹かれるのか自分でもよくわからなかったんです。でもふと、この作品を読んでいて気づいたことがありました。それは、メグレが捜査を進める中で、犯人や被害者はもちろん、その周囲にいる人々も含め、彼らのさまざまな側面、家族や友人ですら知り得なかったその人のまるごとが明らかにされるんですね。そのことにとても強く惹かれたのだと思います。
普通は、どんなに近しい人であってもその人のすべての面を知ることはほとんど不可能です。自分のことを考えても、家族や友達、仕事で関わる人、道ですれ違う人など、相手との関係によってその人への接し方を決めているわけで、同じ相手には自分の一つの側面しか見えていないことになります。
例えば「メグレ間違う」では冒頭で、被害者のリュリュという若い女は、貧しい家に生まれ、これまでもずっと貧しく、体を売って生活してきたことがわかります。それは誰もが知り得たリュリュのある一つの姿です。メグレは生きていた時の彼女を知らないので、残された写真から生きていた時の彼女の姿を思い浮かべ、住んでいた部屋やその持ち物からどんな毎日を送っていたか想像します。すると、そんな生活を続けていたにも関わらず、彼女がどこか子供っぽい純粋さを持ち続け、未来に淡い夢を抱いていたことに思い至ります。一方、彼女を囲っていた男は、地位も名声もお金もある、メグレも新聞などでその名を知っていた著名な人物。周囲にいる女たちは彼の偉大さを口にし、彼に取り入るためにどんなこともやろうとするほどです。でもその奥底には、自分以外の人間に対して非情なまでの冷たさを持っています。まるでモノに対するように、相手がどう思おうが、どうなろうが関係ないのです。そのことにメグレは気づき、それこそが事件の引き金になったことを暴き出します。
万が一その男の真の姿が見えなくても、いずれ事件は解決されたでしょう。ただ、メグレがこの事件で最も知るべきだと考えたのは、彼の本性であり、そこから生まれた歪んだ人間関係でした。
結果だけが求められるようになった現代では、ある人物が過程で行った行為、その人がどういう人であるかといったようなことが問題視されることはほとんどなくなってしまいました。果たしてそれは正しいことなのか? メグレシリーズを読むたびにそう考えてしまいます。(土澤)
■詳細
文庫『メグレ間違う』
248ページ
2000年9月 初版
■古書
帯付き。表紙カバーに細かな傷が若干ありますが、他は特に目立った傷みはありません。
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