『山の眼玉』畦地梅太郎, ヤマケイ文庫
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畦地さんの絵が気になり始めたのはいつだろうと思い返してみる。確か、どこかの書店で『岳人』の表紙を見たのが最初だっただろうか。そのとき『誰の絵なんだろう?』と、作者の名前を雑誌のそこかしこで探したが見つけることができず、、結局、Googleの検索でやっとこさ探りあてた。しかし今度は名前が読めない。これにも時間がかかったので、ここに併記しておこう。畦地梅太郎 (あぜちうめたろう)さん。
1902年から1999年を生きた畦地さんは、2つの大きな戦争と、その間に起きた関東大震災を経験されている。乙種合格だったため兵役は免れ、新聞配達や浴場の背景の絵を描いたりして生計を立てた。
ちなみに、彼の独特な線や色は、実は版画である。20代前半で勤めた内閣印刷局の仕事が、版画だった。
『山の眼玉』や雑誌『岳人』の表紙で描かれるのは「山男」というらしい。畦地さんは「モデルはわたしだ」というそうだが、自画像ではなさそうだというのが解説者の説だ。
※2014年、岳人の発行元は中日新聞社から、登山用品メーカーのモンベルになり、そのタイミングで、表1に畦地さんの版画が採用された。
山男は一見、無表情のように思えるものが多いが、よく見ると微笑んでいたり、眼を見開いてじーっと前を見つめている。鳥を抱く手つきが、優しい。
『山の眼玉』は、1957年の山岳文庫(朋文堂)の復刊で、版画をふんだんにあしらった47編の紀行文と、カラー16ページがついて、畦地さんの作品を手軽に手元に置いておける一冊だ。
2015.12.25 星野陽介
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